6/18 情報追記しました
これまでの、飲食店のビジネスモデルはイートインによる売上が基本とされてきました。しかし、イートインでの売上確保が厳しい「ウィズコロナ」「アフターコロナ」においては、インターネットを活用したオンラインショプは重要な販売チャネルになります。これまで飲食業界では、人材問題、剥離多売による低利益率などもあり、実行に移すハードルが高いと思われていた「オンライショップ」。現在のような変化の必要な社会で、まだまだビジネスの伸び代のあるオンラインショップにチャレンジし、日本の飲食店がコロナショックを乗り越えるきっかけになればと思います。
まずは、このページでオンラインショップに関する基本事項をまとめさせて頂きますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
【withコロナ】飲食店オンラインショプ事例
事例1
フレンチの技術と契約農家の野菜をたっぷり詰め込んだキッシュのオンラインショップ『Bistro Plein』
引用元:https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakirie/20200529-00180817/
4、5月は店舖を完全に休業し、オンラインショップ営業に舵を切ったビストロの取り組みになります。キッシュやシャルキュトリーのオンラインショップが好評で、SNSでの告知が中心だったものの全国から注文が入っているようです。
Bistro Plein ECサイト:https://bistroplein.official.ec/
事例2
冷凍ラーメンセットのEC販売『ラーメン凪』
引用元:https://nagi-niboshi.shop-pro.jp/
国内だけでなく海外にも出店しているラーメン専門店「ラーメン凪」は自社工場の製品を急速冷凍したラーメンセットを自社のオンラインショップで発売を開始しました。看板商品の煮干しラーメンのお土産セット、油そば、メンマやチャーシューなどのトッピング、オリジナルグッズなども品揃えしています。
事例3
冷凍パンのEC販売『パンとエスプレッソと』
引用元:https://bread-espresso.shop/
表参道をはじめ国内にベーカリーカフェなどを展開している「日と々と」は自社の食パンやフレンチトーストのセットなどを自社ECサイトで販売を開始しました。こちらの企業では冷凍パンの販売を始めて実施しました。
事例4
塚田農場のミールキット販売「おうち塚田農場」
居酒屋「塚田農場」の人気メニューをミールキット化し、自宅でも楽しめる商品として自社ECサイトを立ち上げて販売しました。一部商品はオイシックスとも連携して販売しています。オイシックスでの販売も好調で1日の販売数を限定しているがその数がなくなるほどの推移で売れているそうです。ちなみに、オイシックス内の企画「おうちレストラン」も好調のようで、参画店舖が増えているようです。
※Oisixsお家レストラン
情報元:https://www.oisix.com/shop.gift2–Wsc1-restaurant-support__html.htm
【まずは流れを確認!!】オンラインショップ立ち上げフローについて
①商品開発
最も重要となる販売商品を開発する必要があります。
自店での名物メニュー、人気メニューの商品化、こだわって作っている自家製ソース、ドレッシングなどの調味料の販売が一般的になります。その他、焼肉セット、ラーメンセット、鍋・しゃぶしゃぶセットなどミールキット形式の販売や贈答用のギフトセットの商品販売もあります。
マーケットリサーチを行い、マーケットニーズ、競合調査なども実施した方が良いとは思いますが、中小個人飲食店では中々そのようなノウハウや時間を確保することは難しいと思います。そのため、シンプルな方法として、店舖に来店されたお客様の要望としてお土産に持ち帰りたいなどの「声」を参考にした方が良いかと思います。店内での消費ではなく、店舖以外でのニーズがあったメニューなどを振り返り、そのメニューを商品化につなげると良いと思います。また、常連のお客様にヒアリングするのもう良い方法です。
商品販売にはコアなファンが必要となります。万人受けする商品を店舖側で開発するのではなく、圧倒的熱量のあるファンの要望に応えられるメニューや味を商品化することで、インパクトのあるイチ個人店らしい商品が出来上がる可能性が高いです。
注意点
オンラインショップでの商品販売には各食品に合わせた製造許可が必要となることが多いです。
まずは、最寄りの保健所に相談することが重要です。商品のアイデアや試作品ができたタイミングで保健所に相談し、販売に向けての適切手順を踏む必要があります。ネット上にも製造許可に関する情報はありますが、正直具体性がありません。そのため、ネット上の情報を元に判断するのではなく、必ず保健所に相談することをおすすめ致します。
②商品設計
ここでは具体的な商品特性を整理します。オンラインショップの目的は、商品を販売し売上・利益をつくることになります。良い商品を作れば売れるわけでないないことを認識しておくことも大切です。
商品機能
自店の商品の強みを改めて整理します。使用している食材・調理方法・栄養素・味・香りなど自店のキーポイントはどこなのか。また他社商品との差別化ポイントはどこなのかを明確にしておくことが大切です。ただ、目指すべきところはブルーオーシャンになります。つまり、「業界初」「日本初」「世界初」などこれまでにない商品を開発し、商品化することが売れる商品への近道となります。
顧客体験
商品機能のところでも触れましたが、これまでに存在していなかった商品を開発することが重要になります。
現代、特に日本のような成熟した社会でユーザーは常に新しい「体験」を求めています。ここでは中小個人店のオンラインショップへの新規出店を想定しております。中小個人店の強みは柔軟さ、スピード感、アイデアだと思いますので、自店の特徴を生かして、常連のお客様の声も参考にしながら商品開発を進めてみると良いのではないかと思います。
また、人間の『五感』を意識した商品開発も重要かと思います。店舖でのイートイン利用では、意識しなくても『五感』全てを通してユーザーは食体験を味わっています。オンラインショップでの商品販売は飲食店(外食)の強みである『五感』が弱まります。そのため、家庭でも飲食店の雰囲気を味わえる工夫が特に必要になります。この顧客体験の質が重要なポイントであることは間違いありません。
価格設定
商品の利用シーンに合わせた価格設定が必要となります。日常的な食事利用からギフト、お祝い利用まで様々なシーンがあります。競合となる商品の価格リサーチや身近な人へのユーザーリサーチなどを参考にすると良いかと思います。まずは、ヘビーユーザーまたはファンとなりうる方へのヒアリングを通して、購入しても良い価格を導き、その価格からのスタートも良いかと思います。
パッケージ設計(デザイン)
初期段階ではあまりこだわる必要はないと思います。販売当初は、常に商品改善・販売改善が必要となるため、デザインやパッケージにこだわるための費用は抑えたいところです。現代では個人マーケットも拡大し、手作り感やクラフト感の方が好印象の場合もあります。販売初期は自店のリソースの中であえて手作り感のあるデザインを打ち出し、常連のお客様を中心に、愛着を持ってもらえるパッケージを意識するのが良いと考えられます。徐々に商品販売が安定し、新規顧客開拓フェーズになった際に、商品の世界観、ブランディングの意味でデザイン&パッケージを見直すのが良いと思います。
③バリューチェーン整備
販売する商品開発が進み、実際にどのように販売を行っていくのかをここでは確認しておきたいと思います。
ECサイト構築
現在、ECサイト構築はとても容易になりました。必要情報を登録するだけで、当日からオンラインショップをオープンできるようになっております。現在自社のECサイト構築には2パターンあります。1つめはECサイト構築プラットフォームを活用する。2つめは自社ECサイトを独自に立ち上げ、そのサイトにECサイトでよく利用されるカート機能のシステムを導入するパターンです。1つ目の代表サービスは「BASE」になります。個人オーナーでも簡単に情報を入力するだけで開設ができます。メリットは手軽さになります。2つ目はの代表サービスは「EC-CUBE」になります。こちらのメリットはカスタマイズ性です。ECサイトの目的や世界感に合わせて自由にカスタマイズしていくことが可能となります。詳細は、後ほどご説明させて頂きます。
ECサイト運用
ECサイトの情報管理が中心となります。商品情報の登録や管理、サイトへのアクセス向上のためのマーケティング施策などを実施することになります。お店の店長であり、広報担当者の役割も担うことを想定した方が良いかと思います。
配送管理
ECサイトに注文が入った際は、顧客情報を確認し速やかに商品を発送する必要があります。商品発送には商品確認、梱包、運送会社への配送依頼などの作業が必要になります。商品が良くても、配送の遅れや配送内容のミスにより顧客満足度の低下につながりますので、事前に作業オペレーションを確認する必要があります。
在庫管理
オンラインショップのオープン当社は少数のアイテムからのスタートになると思いますので、最低限の商品在庫の確保で良いか思います。ただ、商品のアイテム数増加や注文数増加による在庫増加が現実化すると在庫管理の方法も確率する必要があります。
カスタマーサポート
ECサイトやSNSアカウント上でのコミュニケーションが想定されます。実店舖での接客とは少し異なり、ネット上のコミュニケーションに慣れる必要があります。オンラインショップに関わらず、現代ではSNS上でのコミュニケーションの重要度が増していますので、積極的に取り組むこと重要です。実店舖で多くのフォロワー(ファン)を獲得することで、オンラインショップオープンと同時に販売や販促にプラスに働きます。
④マーケティング戦略
商品とオンラインショップができてからがまた重要になります。商品販売数を伸ばすには第一に、商品を知って頂くことが重要となります。そのためも、販促や広報活動にも注力する必要があります。ここでは、代表的なマーケティング活動をピックアップしましたので、自店で取り組めるところからスタートしてみると良いかと思います。
・マーケティングプラン設計
・コンセプト(ブランド/デザイン設計)
・商品撮影
・動画制作
・販促物制作
・SNS運用
・インフルエンサー活用
・クラウドファンディング活用
・プレスリリース
・WEB広告運用
・データ分析
【ショップ開設の強い味方!!】オンラインショップ用プラットフォーム情報
基本プラットフォーム一覧
BASE
ネットショップ開設実績No.1のECプラットフォーム。個人、中小企業向けの誰でも簡単に開設できるところを強みとしたサービスです。開設したショップが掲載されているアプリもあります。
初期費用・月額費用0円で、開設ハードルがとても低いです。費用は商品購入時の決済手数料になります。BASEかんたん決済で「3.6%+40円」+サービス利用料3%が発生します。この費用がBASE使用料となります。その他にクレジット決済手数料や配送手数料などがかかります。サイト開設費用は抑えられますが、1商品販売での利益率は上がることになります。オンラインショップ開設時のお試しとしてはとてもメリットがありますが、販売数が増加してきた場合は利益率向上のために、別のECサイト運営を検討した方が良いかもしれません。
SRORES
こちらのサービスも初期費用・月額費用0円で開設できるサービスとなります。
先ほど紹介したBASEと同じく、誰でも簡単にすぐ開設できるサービスになります。費用が少し異なります。SRORESは初期・月額費用0円のフリープランと月額1,980円かかるスタンダードプランがあります。フリープランの場合決済手数料5%。スタンダードプランの場合は決済手数料3.6%に下がります。ある程度の販売売上が見込める場合はやはり決済手数料を下げる選択が必要になります。
Shopify
Shopifyはカナダ発のECサイト構築サービスです。
日本市場への参入は2017年で、海外ではECサイト構築プラットフォームとして地位を確立しております。今後日本でのビジネス展開が加速すると言われています。初期費用0円ですが、プランは3段階用意されています。ベーシック・スタンダード・プレミアムの3つで、ベーシックは月29ドルからになります。こちらのサービスの強みは世界展開しているため、越境ECに強いこと。またFACEBOOやインスタグラムなどとの連携もしているため、SNSとの相性も良いところになります。今後国外へのネット販売を想定されている場合は、オンラインショップのスタート時点から活用するのもありかと思います。※Shopifyにはフリープランがありませんが、14日間の無料トライアルがあります。試しに開設してみるのもありかと思います。
EC-CUBE
こちらはECサイト構築が可能なオープンソースの無料ソフトになります。
これまでご紹介したECサイト構築はECサイトに関するシステムや機能をレンタルして運営する仕組みになります。一方こちらは、自社サイトを構築し、EC機能を持たせるソフトになります。EC-CUBEはこのソフトとしては歴史・実績があり、使い方に関する情報がネット上にあることも良いところです。
ウェブサイト構築の知識がない方にとっては少しハードルが上がりますが、使い方に慣れれば、ECサイト初心者の方にも十分使えるものになります。ソフト自体は無料で提供されて用途に合わせてカスタマイズの幅があります。強みとしても、サイトのデザインや機能などの柔軟性が挙げられます。費用もご紹介した3社と違い、サービス使用手数料がないため、販売数が伸びてきたネットショップが手数料を抑えること、またブランディング想定したフェーズになるとこちらのようなサービスを検討していくと良いかと思います。
ここではご紹介しませんが、EC-CUBEのようなEC構築ソフトは様々ありますので、検討されるタイミングでリサーチしてみると良いかと思います。
おすすめプラットフォーム
飲食店のオンラインショップ開設のためのサービスをご紹介させて頂きましたが、ここではおすすめをご紹介したいと思います。
とりあえず始めるなら
『BASE』初期月額0円で機能も充実しており、まず出店してみるには最も使用しやすいかと思います。手数料などが少しかかりますが、飲食店のように限られたリソース(費用・人材・ノウハウ)を考えるとすぐに始められるサービスが最適かと考えます。まずは、販売を開始してみて少しでも売れる成功体験を積むことが重要かと思います。
中長期的にオンラインショップを重要な事業の柱に育てるなら
『Shopify』ECの強みは世界中どこにでも販売可能ということが挙げられます。日本ではBASEの認知度が高いですが、国外への販売を想定するのであれば、世界的なプラットフォームのShopifyを活用していく方が良いかもしれません。また、ShopifyはFACEBOOKなどと連携したように多くのサービスと連携する可能性をひめています。現段階でも楽天市場との連携も行っていますので、サービスとしての成長も今後まだまだ期待できると思われます。
最後に
今回、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」の環境下での飲食店の営業方法の1つ「オンラインショップ」についてご紹介させて頂きました。
緊急事態宣言中の外出自粛中では、イートイン売上がほとんど見込めないため、テイクアウト、デリバリーを実施し、オンラインショップ開設も検討された飲食店も多いかと思います。緊急事態宣言が解除されてからは少しずつイートイン利用も増えて、コロナ前の状態に早く戻ることを期待されている方も多いかと思います。
ただ、正直申し上げる、コロナ前のイートイン売上に戻るのには1〜2年かかると想定されます。また、戻らない可能性も高いと考えております。その環境下で飲食店が生き残るためには、売上に見合った事業規模に見直すか、イートイン売上に頼らず、新たな売上の柱を作るかしかありません。
今後も飲食店ビジネスを継続していこうとお考えの皆様はぜひ後者を選択して頂きたいと思います。新型コロナをきっかけに社会が大きく変化している中、過去のビジネスモデルで生き残るのはほんの一部かと思います。このタイミングで飲食店のビジネスモデルをアップデートし、今後10年生き残るお店をつくるためには「オンラインショップ/EC」は不可欠ではないでしょうか。
ぜひ、新しい飲食店づくりのきっかけの情報として読んで頂ければ幸いです。