10月に緊急事態宣言が解除され早くも二ヶ月が経ちました。以前と比べ人の動きは落ち着いたように見えるものの、引き続き以前とは異なる新しい提供の仕方がより注目されていきます。
コロナ禍で業態を変える企業も少なくはない今、これからの時代にマッチした飲食店の在り方とはなんでしょうか?開業以来から守ってきたお店のコンセプトを、改めて調整することも大切。 時代に柔軟に対応しながら、提供していきたいものを維持していくために今一度コンセプトや業態を確認してみましょう。
業態やコンセプトを変えて営業するお店が増えた
その理由を以下4点の項目でみていきましょう。
・お客さまのライフスタイルに変化が見られた
→歓送迎会や忘年会、仕事の接待など飲食店で行われていた大人数での宴会が減少。
また多くの会社員がリモートワークへ移行したことによって外出が減り、ふらっとお店に立ち寄りされることもなくなった。
・飲食店の取りまく環境の変化
→緊急事態宣言やまん延防止等重要措置から営業時間の短縮、アルコール提供の規制は飲食店にとっては大きな痛手に。
・店舗営業コストの見直し
→固定費 家賃
→変動費 人件費材料費
・設備の見直し
→コロナ禍ということで、ソーシャルディスタンスを考慮した設備や席配置を新たに取り入れる必要ができた。またイートインだけでなく、デリバリーやテイクアウト販売も想定した店作りの必要性が高まる。
自店のコンセプトは?
コンセプトは必要?
大手牛丼チェーン店・吉野家は「うまい、やすい、はやい」、「第3の場所(サードプレイス)」を提供するコーヒーチェーン・スターバックスコーヒーなど経営方針となるコンセプトはお店作りにおいて“軸”となるもの。その軸がブレてしまうと、自身らが“提供したい!”と向かっていた方向性がずれてしまい、お客さまにとってもどんなサービスや料理を提供してくれるのかが分かりづらい。「どこで食事をとろうか」と選ぶなか、選択肢には入りにくいのが分かります。 では改めて、お店の“コンセプト”とは一体なんでしょうか?イメージしやすい“お店作り”を、“5W2H”でみていきましょう。
【目標とする自店を5W2Hで伝える】
- When「営業時間はいつ?」
→ランチの時間に力を入れたいのか、それともディナー?はたまた早朝開店で仕事・お出掛け前の時間帯に利用してもらうのか?
- Where「どのエリアで出店する?」
→同じお店を出すにしても駅前・住宅街近辺・オフィス街などエリアによって印象はガラッと変わります。自分が理想とするお店にあう街並みとはイメージできていますか?
- Who「ターゲットとなる客層は?」
→女性がメインなのか、学生・サラリーマンなのか?男性と設定したとすれば年齢層はどの範囲を狙いたいのか?などターゲットを決めること。どんなお客さまに利用してもらいたいか性別や年齢層を絞っておきましょう。
- What「何を売りに提供する?」
→食事のジャンル・メニューや、お客さまに提供できるサービスとは何ができるか。自分たちが得意とするもの、こだわりを持って提供したいものはなんですか?自店の強みを書き出してみてください。
- Why「なぜ店を始めるのか?」
→そもそもなぜ自分が開業したいのか、その理由を改めて振り返ること。初心を忘れずに今日まで経営はできていますか?
- How much「価格帯はどのくらいにするか?」
→食事によって平均価格も異なりますが、高級感を引き出した金額で提供するのか、カジュアルにお店を利用しやすい金額に設定するのか。理想とするターゲットが入りやすい価格帯であるかとともに、経営面でも自分たちが無理なくお店を保てる設定になっているかとバランス取れているかも重要です。
- How「どうやってお店をお客さまにアピールするか?」
→近年、飲食店の運営においてもSNSの活用は欠かせない手段となりました。InstagramやTwitterなど、自店のアカウントはしっかり機能していますか?作ったままで投稿が止まっているのは実店舗に対する印象も消極的に感じてしまうこともあります。webからお店検索をするよりもSNSからお店を選ぶ時代です。上手く活用していきましょう。
またSNSに関した特徴や活用方法に関した記事も過去に掲載していますので、こちらもあわせてチェックしてみてください。
過去記事リンク:https://biz-hibana.com/restaurant-sns/
今年注目の飲食店 コンセプト編
年内にオープンした多くの飲食店の中から、共通される注目コンセプトをいくつかあげてみます。昨年に続き2021年、過去に見られない特殊な年に開業した飲食店からは、今後生き残るお店作りのヒントが多く隠されていすはず!
SDGsを意識
昨今欠かせないキーワードに間違いなく入るのが「SDGs」。世界規模で目指されている“持続可能な開発目標”として、飲食業界でも繰り返し使用可能なアイテムや生産過程において環境負荷の少ない食材を選択・植物性の食事を多く摂るなど“サステナブル”な取り組みや見直しが話題に。また、化学調味料に頼らないといった素材の持ち味を活かした食事やドリンク、健康志向をうたう飲食店も増えています。
- 東京・代々木上原「GOOD EAT VILLAGE」
日本中の”GOOD EAT(=愛すべき食)を未来につなぐ活動“を発信する場とした複合施設。店内で提供される食事は「食材を捨てない・食品を使い切る・余計に作らない」といったフードロス削減に対して徹底した3つの規則を設けている。
参照:https://www.foods-ch.com/news/prt_121605/
- 東京・渋谷「茶珈堂」
ブランドコンセプトに「いいことの、始まりに。」を掲げ、生花・ドライフラワーショップとコラボしたカフェ。
【3つのこだわり】
①ボタニカルインテリアで心にやさしい
②安心の食材、こだわりの珈琲・紅茶で体にやさしい
③SDGsに実戦で地球にやさしい
参照:https://www.foods-ch.com/news/prt_116475/
- 東京・神楽坂「Vegetable base TOKYO」
参照:https://www.instagram.com/p/CWSzVmHpPW5/?utm_medium=copy_link
「毎日に寄り添う、Vegを」を提案しているベジタブルカフェ。化学調味料・添加物を使用しないサラダやサンドイッチにスープ、手作りのドレッシングなど利用者の健康に寄り添う。
参照:https://instagram.com/vegetablebase_kagurazaka?utm_medium=copy_link
- 東京・広尾「ファビュダイン」
参照:https://fabulous-lab.co.jp/fabudine/
「安心して体によく健康に、元気になれる食事を」コンセプトにお粥・自然派ワイン・蒸し料理をメインにしたお店。トッピングやソースに至るまでオーガニックの原料にこだわっています。
参照:https://www.foods-ch.com/news/prt_110305/
- 東京・渋谷「KAMERA」
参照:https://www.instagram.com/p/CVe9VbCBs9j/?utm_medium=copy_link
焼売と烏龍茶をメインに提供する居酒屋。
調理方法にフレンチの技法をはじめ、世界各国の調理方法を知るシェフによる無添加だからこそ引き出せる焼売の旨みと、五感で楽しめる香り高い烏龍茶を多種用意。
参照:https://www.foods-ch.com/news/prt_121348/
コラボレーション
飲食店と他業界の企業がコラボレーションした限定食を販売することはもう珍しくはない近年。相互ファンの関心を惹きつけることで、普段利用のない客層への呼び込みにもなります。
- 飲食店×コンビニ
参照:https://mr-cheesecake.com/blogs/news/20210215
今年の冬、“人生最高のチーズケーキを”テーマに、国内外にて活躍、ミシュランを若くして取得した田村シェフが手がける「ミスターチーズケーキ」とコラボしたセブンイレブン。チーズケーキは通常オンラインのみで販売され、販売開始とともに即完売してしまうほどの大人気ぶり。そうしたなかセブンとコラボした店頭商品は3点。「ミスターチーズケーキアイスクリーム」「ワッフルコーンミスターチズケーキカカオラズベリー」「チロルチョコ〈ミスターチーズケーキ〉」は一気に全商品展開するのではなく第1弾、2弾とずらして販売することで、消費者の購買意識をくすぐった。「近くて便利」を提供し続けるコンビニ、人が求める美味しさや食感を保て、安定した商品を突き詰める商品を手がけるコンビニスイーツに、田村シェフはもともと関心があったそう。
- 飲食店×ファッション
参照:https://www.nikoand.jp/news/1556/
中国の庶民料理を気取らずに食べてもらいたい思いから始まった中国料理点「紅虎餃子房」。コラボをしたのは「自分らしさを創造する幸せ」を提供するファッションライフスタイルブランド「nico and…」。「食」と「ファッション」の楽しさを提供すべく、互いの型にハマらないユニークなセンスから親和性を感じ実現したそう。ロゴを活用したアクセサリーや服が展開されたなか、非売品であった紅虎餃子房で実際使用されている餃子皿の販売もされていました。
- 飲食店×サウナ
参照:https://food-stadium.com/headline/31003/2/
コンセプトに「サウナと居酒屋が同時に楽しめるヘルスケア施設」を掲げている「恵比寿サウナー」。飲食と一緒に他業種の要素を取り入れたく、自身がサウナ好きということでサウナスペースを設けたそう。そうすることで今後飲食業界が不振に陥ったとしても、別の道に転換しやすいというメリットも。得意とする飲食と、シンプルに自身が好きなことを掛け合わせて開業することで新しいトレンドを作り出せるきっかけに。
店内の空間作りに加えて、”体験”を提供!
コロナ禍、例年に比べて旅行する機会がぐっと減少したなかで、国内に居ても海外の雰囲気を味わえるようなコンセプトを打ち出すお店が増えました。また他にもキャンプや登山など、アウトドアを生活に取り入れる方が急増したことからそうした非日常を味わえる体験を、料理とセットで楽しめるようなサービスを売るお店も現れています。
- 兵庫・猪名川「SUMI TERRACE」
参照:https://sumiterrace-bbq.owst.jp
コンセプトは炭火で「つくって・たべて・たのしむ!」という、天候を気にせず一年中楽しめるインドアバーベキュー施設。キャンプギアを使用した“キャンプ飯”はもちろん、豊富なお肉の種類や手作りハンバーガーなどメニューが充実。
業態変更&事例
店内をワンオペで回せる規模に変更
一度解雇し減らしてしまったスタッフを、今から急募するというよりは人員少ないままで営業できる店づくりが好ましいところ。店舗内のイートインスペースを削ってテイクアウトメインにしたり、人気であったり勝負したい料理を残してメニュー数を減らすなどもその手の一つ。
また冷凍餃子など無人直売所も増加。非接触で売上を立てられること、かつスタッフを雇う必要がないので人件費も抑えられるメリットもあります。
自店の強みをみせながらファストフードのメニューを追加!
コロナ禍で大打撃を受けた飲食店が多いなか、ハンバーガーチェーンなどファストフード店は他と比べて影響が少ないという結果も出ています。自宅での食生活に気を配る方が増えた傍で、テレワーカーが増え手早くお昼を済ませたいというニーズにぴったりなファストフードは生き残りやすい。
そうした流れを通して、ワンハンドで食べられるハンバーガーやチキン専門店に注力する大手飲食企業も急増。それぞれ自店のコンセプトや料理の持ち味をベースに展開し、今後はそこでも重点を置く方向性を示すところも。
まとめ
外食の回数が増えているこの間にも、一組でも多くのお客さまに自店をリピートしてもらいたいもの。
自分たちが届けたい料理やサービスを磨きながら、お客さまの視点をもち選ばれやすいお店作りも忘れずに。