コロナの影響によって生活スタイルが変わり、去年からテイクアウトやデリバリーを利用する方が急増。そしてそれと共に家庭ゴミも増加傾向に。
そこでお客様にとって、食べ終えた後まで気持ちよく過ごしてもらえるテイクアウトの提供方法とは?且つお店にとってもメリットのある取り組みとは?
近年問題になっているプラごみ問題と合わせて、見直してみましょう。
コロナ禍で増えたテイクアウト
ゴミの増加も変化のうちの1つ
世界がコロナの影響により生活スタイルが一変。飲食業界では営業時間の規制がかかるなどあったなかで、自宅でお店の料理が楽しめる「テイクアウト」や「デリバリー」を取り入れ、利用者が急激に増えたのも大きな変化の1つ。メニューの見直しや以前までは特に力を入れていなかったお店でもテイクアウトを導入した、なんてことも多いと思いますが、それとともに増えたのが提供時に発生する容器やカトラリー、ビニール袋といったプラスチックゴミです。
全国ではどのくらい増えている?消費者の声は?
出典: https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200908/k10012606851000.html
NHKニュースウェブによると、全国を見ても前年より家庭で出たプラスチックゴミが5%〜と増えている現状。外出を極力控えるためスーパーでの買い溜めを含めても、どうしても家庭ゴミが増えてしまうのが避けられない様子です。
また、そんな状況が増えたこともあり消費庁のアンケートでは世間的にプラスチックゴミへの関心が高いことがわかります。
出典: https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/2020/white_paper_137.html
特に「過剰だと思う容器包装・製品と思うもの」の上位には飲食に関連したアイテムが挙げられています。せっかく受け渡し時の接客や提供している料理に満足いただけても、こうしたゴミの部分で些細ながらもマイナスな気持ちを生んでしまうようではとても勿体無く感じます。
食べ終えた後まで購入者のそうしたストレスを緩和できること、これが出来るお店とできないお店での印象は長い目で見ると差は大きいと考えられます。
そもそもプラごみ問題とは?何が良くないのか、どう影響しているのか?
そこで改めて、私たちの生活に切り離せないプラごみが何に対してどう影響しているのかを整理してみましょう。世界的に注目されているゴミ問題は飲食業界にも責任がある話。根本を見つめながら、これまでの取り組みを振り返ってみてください。
プラスチックの廃棄方法&リサイクルの現状
私たちが捨てたプラごみは回収後、単純焼却・埋め立て・リサイクルの3種類に分かれて処理されています。
参照:http://www.pwmi.jp/plastics-recycle20091119/waste_plastics/
リサイクル方法は3種類
- マテリアルリサイクル(廃プラスチックを溶かしまたプラスチック製品へ)
- ケミカルリサイクル(廃プラスチックに化学反応を起こしてガスなどの化学原料へ)
- サーマルリサイクル(熱回収)
グラフをみると、家庭ゴミも含まれる“一般廃棄物”ではサーマルリサイクルが主に活用されいます。もともと石炭・石油からつくられているプラスチックはエネルギー量が高く、発電や温水プールの熱源に使われることで再利用はされてはいるものの、灰から有毒ガスが出るなどの問題があり好ましいリサイクルとは言えません。
そうしたこともあり、約8割がリサイクルされていると言われていますが内訳を更に見てみると、一般的に私たちが想像している“モノへ生まれ変わるリサイクル”はまだまだできていないのが現状です。
また、国内だけでは処理が賄えきれず、“リサイクル可能資源”として東南アジアへゴミを輸出しているという事実も。もちろん請け負った国でも処理をする環境が完備されているわけでなく、扱いきれないゴミが野焼きや放置され、近隣住民は喉や目の痒みとした健康被害を受けたり、水質汚染などの問題が起きています。
マイクロプラスチック
直径5mm以下のプラスチックのことを“マイクロプラスチック”と言い、マイクロプラスチックには2種類あります。
「1次マイクロプラスティック」
洗顔料や歯磨き粉に含まれるスクラブ剤がこれにあたり、元々サイズの小さいプラスチック。
「2次マイクロプラスティック」
外でポイ捨てされたペットボトルなどのプラごみが、側溝から川へ渡り海へ流れ着く間に紫外線により削り取られて劣化し、だんだんと細かく砕かれていったもの。
いずれにせよあまりにサイズが細かすぎるため、流出したものの回収は難しいことが問題となっています。
海洋汚染、人体への影響
上であげたマイクロプラスチックから引き起こされる問題が海洋汚染、海の生態系への影響です。過去にもウミガメがビニール袋をクラゲと間違えて飲み込んでしまい体内に蓄積されていた話がありましたが、こうした大きいゴミも含め、マイクロプラスチックは最終的に海へ流出されてしまうことで、生物が餌と誤って摂り込んでしまうことが続出。海の生態系のバランスを狂わせる原因になります。
そしてそうした環境で育ち水揚げされた魚介類を食べている私たちも、少なからず影響を受けています。未だはっきりとした結果は上げられていませんが、体内に摂り込んだ量や頻度が多ければ、消化・排泄しきれず身体の不調を招くことに繋がります。
飲食店が取り組めること
ではこうした現状を受けて、現段階で飲食店が改善できる点とは何があるでしょうか?テイクアウト製品において、改善案を2つあげてみます。
プラスチック製から生分解性素材容器への変更
容器やカトラリーはプラスチック素材ではなく環境に戻りやすい素材を選ぶこと。
今では紙だけでなく、竹やサトウキビから作られたものなど選択肢が増えてきました。選ぶ容器によっては品質が上がるのでコストも上がる場合も出ますが、新しく取り入れるものに関してはテイクアウト・デリバリー支援とした「持続化補助金」などを上手く活用しましょう。こうした補助金情報を知っていると取り組める幅も大きく変わってきますので今一度確認を。
容器持ち込みの協力をお客様に得る
買い物袋の有料化が浸透しつつあるので、袋と一緒に容器もお客様に持参してもらうことで、そもそもの課題である“使い捨て”から脱却可能に。特に住宅街に近い店舗は、利用者が家から容器を持ち出しやすいので取り入れやすいかと思います。
メリットとしてはゴミの削減はもちろん、店側で容器を準備する手間やスペースが省けてコスト削減にも繋がります。またお客様とのそうしたやりとりが増えることで、信頼関係を築きやすく、改めてお店の印象付けができたりと顧客獲得がしやすくもみえます。
実際に取り組んでいる企業例
スターバックス
世界的大手コーヒーチェーンのスターバックスはプラスチック製から紙製ストローへの切り替えや、コーヒーカップもFSC認証を得たペーパーカップに変更。すると元々ブランド力が強いこともありますが、影響力の強いSNSでそれに関した投稿・タグ付けがなされるなどしてより反響を呼んだ結果に。
FSC認証: 環境保全において、しっかり管理がなされている森林から製造されている国際的な証。
ブロンコビリー
ステーキ・ハンバーグ店を展開する株式会社ブロンコビリーでは、テイクアウトに関して去年からバイオマスプラスチックを使用した持ち帰り袋や容器には竹やバガス(サトウキビの搾汁時に出たかすを利用したもの)といった素材でできたものを取り入れています。デザイン性も考慮された容器を使用しているため、料理の見栄えを損なうことなく提供可能に。
IKEA
スウェーデン発祥の家具量販店IKEAは「2030年までに再生可能な素材かリサイクル可能な素材にする」と宣言。製品や、レストランで使用するカトラリーなどが見直され、持続可能な森林由来の素材で作られた再生可能資源100%のものを段階的に導入しています。
まとめ
食べ終えた後、ゴミの処理のことも考えて経営している飲食店は現時点でどのくらいあるのでしょうか?
近年メディアで取り上げられることも増えた“環境問題”。世界目標であるSDGsを意識して生活している消費者も増加中の今、“環境に配慮がなされているお店”であることで好印象をもち、リピーターへと繋がることがきっと多くなるはずです。今後外せない条件になると見据えて、早めに対策をとることで他のお店との差別化もとれます。自分たちができることから、お店に・環境にポジティブな循環を作っていきましょう。
SDGsに関連した記事も掲載していますのでこちらも参考にしてみてください。