2020年10月〜11月はGoToEatキャンペーンが実施され、一時的ではありますが飲食業界にも明るい兆しがありました。しかし、その後キャンペーン終了と同時にコロナ感染者数が増加。結果、営業時間の短縮要請、そして2020年2度目の緊急事態宣言が発令されることに至りました。飲食店にとっても最も重要な稼ぎ時である2020年の忘年会・年末外食需要がほぼなくなり、厳しい経営環境に再度突入することになりました。
今回のこの記事では激動の2020年にどのような飲食トレンドがあったのかを振り返り、そして、2021年はどのような飲食トレンドが注目されるのかを予想、取り上げていきたいと思います。
未だ日本のみならず世界的にコロナ禍から抜け出す出口は見えていませんが、その中でも飲食店を存続させるヒントを少しでも見つけ、お伝えしていければと考えております。
2020年の飲食業界トレンド振り返り
2020年3月末から「新型コロナウイルス」感染拡大の影響が日本でも出始め、歓迎会・送別会シーズンに直撃しました。その後、4月5月の緊急事態宣言発令により休業する店舖がほとんどになり、日本経済が停滞しました。
飲食業界では出口の見えない厳しい環境により閉店する店舖が続出、また大手飲食企業の大量閉店なども話題になりました。6月以降の夏シーズンは感染者数の落ち着きにより、経済が動き初め、飲食店も今後の社会に対応すべくビジネスモデルの見直しに取り組む企業が増えました。
ビジネスモデル変化が叫ばれる中で、話題になったトピックスをここでご紹介させて頂きます。
飲食店営業体制の拡張(テイクアウト・デリバリー・オンラインショップなどの実施)
外食自粛要請が出たことにより、外食需要は極端に減少しました。これまでほとんどの飲食店は「イートイン」営業を中心に行っている店舖が多く、この状況によりほとんどの店舖が昨年対比50%以下になり経営危機に陥りました。
結果、すぐにできる対策として『テイクアウト』『デリバリー』を実施する店舖が急増しました。特に、デリバリーサービスを提供する「UberEats」「出前舘」は問い合わせが殺到していました。
現在は、外資系デリバリー(ウォルト・DiDi Food・foodpandaなど)の日本参入もあり、引き続き、デリバリーサービスは戦国時代になります。しかし、一方で緊急事態宣言で利用していたユーザーも減少し、デリバリーサービスが最近では落ち着いた印象もあります。しかしながら、日本市場に適合させるかのように食事だけでなく物販も行うなど変化が見られます。デリバリー業界は2021年も注目テーマになるかと思います。
業態転換店舖の増加
大手飲食チェーンに多く見られる戦略になります。これまで大箱で収容人数の多い飲食店、特に総合居酒屋に関しては、大人数の宴会利用がほぼ失われ、これまでのイートイン営業を実施することが難しくなりました。
結果、不採算店舗を中心に撤退(閉店)を実施し、コロナ禍でも売上が見込める店舖立地、業態に出店し直す戦略が見られました。
例えば、総合居酒屋の「和民」が「焼肉の和民」に業態転換を行うことや、エーピーカンパニーの展開する「塚田農場」を焼き鳥専門店の「つかだ」に変更されるなど『脱居酒屋』の流れが目立ちました。
ファミリーレストランでも、一部店舖をイートイン営業を停止し、テイクアウト、デリバリー、ドライブスルー専用に転換するなども店舖戦略がありました。
大人数での飲み会開催が今年来年と厳しいことを考えるとランニングコストが高い、大箱の居酒屋はリスクでしかないため、今後さらに小規模でマルチな営業が可能となる店舖に業態転換されることが予測されます。
例)
- 居酒屋→食事メインの専門業態
- イートイン中心→テイクアウト・デリバリー中心の店舖
ゴーストレストラン
イートイン中心の実店舗とは異なり、デリバリー営業に特化した飲食店モデルです。
特徴としては、1店舖で複数の料理ジャンルブランドを立ち上げ、デリバリーでのみ料理を提供します。また、既存の飲食店が実店舗の店名とは異なる「サブブランド」を作り展開する飲食店を指す場合もあります。バーチャルレストランとも呼ばれる場合もあります。
キッチンカー
個人のキッチンカー運営者と空きスペースのマッチングを行ってくれえるサービスの登場、また独立して店舖を持ちたい人が減少したことで、個人で自由にキッチンカーで食を提供することも注目されました。
飲食業界の新しい働く環境として今後も注目されるビジネスの1つになります。
飲食店DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタルトランスフォーメーションとは「ITの活用により、顧客体験の質を高めること」を指します。
代表的なサービスとして、「モバイルオーダー」の導入などがあります。事前に専用アプリで注文が可能、決済はクレジットカードで行い非接触、店舖に到着するタイミングで注文確定をすることで、店舖到着時間に合わせて商品を準備し、店舖到着時にスムーズにものを受け取ることが可能になります。レジで待つ必要がなくなり、スムーズな買い物体験が可能になりました。
モバイルオーダーの導入事例:マクドナルド・吉野家など
SDGs(エスディージーズ)
飲食業界でも「SDGs」の考えを取り入れた取り組みが実施されるようになりました。
例えば、賞味期限が切れたものは商品廃棄しなければなりませんが、フードロスをなくすために、飲食店の残り料理を低価格で販売するサービス「タベテ」なども注目されました。そのほか、環境に配慮した「レジ袋有料化」、大豆ミートなど「代替肉」のメニュー開発なども活発になりました。今後は『SDGs』を取り入れたビジネスモデルが基本になっていくことが予想されます。
GoToEatキャンペーン
政府主導で飲食店送客を目としたキャンペーンが実施されました。実施期間は10月〜11月中旬ごろまで実施され、予想以上に飲食店への送客が実現しました。
主要グルメサイト経由でネット予約されたお客様にランチタイム予約で500ポイント、ディナー予約で1000ポイント還元される内容で、結果として、開始直後から対象店舖のネット予約が大幅に増加、10月11月の売上に大きく貢献したキャンペーンになりました。
一部問題のあるユーザーの行動もありましたが、「トリキの錬金術」「無限くら寿司」などのワードも話題になるなど、飲食業界にとっては2020年のトピックとしては大きなものとなりました。その後、GoToEatお食事券も予定されていましたが、コロナ感染拡大により延期されることになりました。
2021年に実施される際は、飲食店としては必ず参画しておきたい施策になると思います。
D2C(SNS活用・動画コンテンツの活用)
コロナ感染拡大に伴い、人の流動が減少し、飲食店にとって新規客の集客が難しくなりました。そのため、店舖に来店されるお客様は常連、リピーターの方が多くなり、そのお客様との繋がりの質と量によって店舖の売上に差が現れるようになりました。
結果として、ファンとの繋がりの重要性が見直されはじめました。そこでファンとのコミュニケーション獲得のため、Googleマイビジネス、インスタグラム、youtube上での動画コンテンツの配信に取り組む店舖が増加しました。
これまでは、グルメサイトやインターネット広告を活用したマーケティングが主流だったものの、無料のツールを活用した地道なマーケティングに舵を切る方向になった印象です。
SNSを活用したコンテンツ配信は地道な活動とコミュニケーションが肝となります。そのような業務をいかに継続できる仕組みが作れるかが1つ重要なポイントになりそうです。
2021年注目の飲食トレンドワード
①IT・ロボットフードテック
引用元:https://www.juchheim.co.jp
近年、ITそしてAIの発展が目覚ましく進みました。その結果、これまで人材不足、技術不足となっていた飲食業界にもAIやロボットを活用した業務改善が実現しつつあります。今後数年で、飲食業界の「職人気質」「アナログ」という業界イメージが一新してしまうかもしれません。
バウムクーヘン専用AIオーブン『THEO(テオ)』
引用元:https://www.juchheim.co.jp
『かっぱ寿司』で「自動走行ロボットを使って飲み物を提供する実証実験開始」
引用元:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2012/25/news138.html
②企業・地域コラボ
引用元:https://www.undiscovered.jp
コロナ禍で人の移動が制限され、様々なサービスや商品の販売が厳しくなりました。そのような環境下で、企業間コラボにより、新しい付加価値をつけ、販売促進を行う企画・イベントが多く見られるようになりました。このような状況だからこそお互い助け合い、ビジネスを存続させようという動きが活発になっているようです。
地方の隠された宝物を選ぶグランプリ『にっぽんの宝物』
引用元:https://www.undiscovered.jp/
渋パス(美味しい渋谷区パスポート)
引用元:https://www.favy.info/shibuya_passport_c/lp01
③イノベー食
未来食・環境に配慮した食材を使用した料理などを食の革命を起こしている食糧を「イノベー食」と呼びます。近年、近未来の食の基本となりうる新しい食を提供するベンチャー企業が増え、活発化している分野になります。
完全栄養食(BASE FOOD)
代替肉(畜肉ではなく、豆類や米などの植物性の原材料で作られた肉を模した製品)
④冷食EC
冷凍技術・配送システムの向上により美味しいものを安全な形で提供可能になりました。このような技術が向上することで、食材ロスも軽減することが可能になり、様々な企業の参入が予想され、ますます注目される市場になると思われます。
ロイヤルデリ(フローズンミール)
引用元:https://www.shoproyal.jp/shop/c/c10/
Pan &(パンド)
【Pan &(パンド)】「食べるその時が焼きたて」の冷凍パン
公式ストアを見る
⑤完全キャッシュレス店舖・省人化店舖
ITを活用し、省人化・効率化した店舖が今後主流になると考えられます。特に飲食店ビジネスでは営業利益率の高いビジネスモデルの構築がコロナ禍により急務となりました。今後はこのような形式を採用した様々な店舖・業態が開発されるため注目です。
完全非接触型テイクアウト業態『ブルースターバーガー』
引用元:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00392/00003/
TOUCH TO GO(無人AI決済店舖)※小売
⑥クラウドファンディングの活用
資金の内部留保が少ない飲食企業が新事業立ち上げにクラウドファンディングを活用することが珍しくなくなりました。今後は資金面だけでなく、新規事業テスト、広告宣伝などの意味も含め、多くの飲食店が活用していくことが予想されます。
参考記事:緊急事態宣言 飲食店運営資金をクラウドファンディングで支援
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210111/k10012807881000.html
引用記事:飲食店に最適なクラウドファンディングまとめ
https://www.inshokuten.com/foodist/article/5866/
⑦補足(2021年のメニュートレンド)
株式会社ぐるなびから発表された2021年の食トレンド情報をご紹介致します。
食べたいメニューについては「焼肉」「寿司」「ステーキ」を例年とあまり変わらない印象です。コロナ禍で飲食店回数の減少もあり、これらのジャンルはプチ贅沢さがある料理の代表になるかと思います。また、郊外立地での家族利用もしやすいジャンルも選ばれる利用かと思います。
トレンドメニューに関しては、緊急事態宣言の影響もあり「テイクアウトグルメ」が注目です。また、近年は韓国、台湾などアジアグルメが人気になっているため、2021年も引き続き注目度が高いと思われます。
2021年食べたいメニューランキング
- 焼肉
- 寿司
- ステーキ
2021年トレンド予測メニュー
- テイクアウトグルメ
- B級韓国グルメ
- アジアグルメ
引用元:【ぐるなびリサーチ部】2021年食べたいメニューランキング・トレンド予測メニュー発表!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001036.000001511.html
中小企業・個人飲食店で実施できること
2021年も緊急事態宣言発令から始まり、飲食店経営にとっては厳しいスタートになりました。そのような厳しい環境下でも今後飲食店が存続していくために「今」何をすべきかをここでまとめておきたいと思います。
主に取り組む必要があることは以下になります。特に1と2は必須になります。
- 実店舗の営業状況見直し(FLコスト・営業ツールなど)
- テイクアウト・デリバリー
- 物販・オンラインショップ
「実店舗の営業状況見直し(FLコスト・営業ツールなど)」については減少した売上の中でも、損益分岐点を超えられるように経営数値の調整が必要になります。基本は徹底的に無駄を排除し、必要な経費のみ残すことです。FLコストの見直しを多くの店舖で実施されていると思いますが、その他の経費も必ず詳細を把握しておきましょう。
次に、「テイクアウト・デリバリー」の見直しを行いましょう。2020年4月の緊急事態宣言からスタートした店舖が多いと思いますが、成果が出ている店舖とそうでない店舖が二極化しました。今後も感染者数の増加と減少を繰り返すことが予想されますので、その場合、イートイン営業の売上が見込める場合とそうでない場合が必ずあります。今のうちからテイクアウト・デリバリーで売れる商品(メニュー)作りを行い、今後の売上の柱として強化しておきましょう。特に、テイクアウトはイートイン利用のお客様との関連性が強いため、よりテイクアウト販売に注力することで、イートイン利用が増えるタイミングで強い武器になります。ぜひ、店舖オリジナルの「テイクアウト(お持ち帰り)商品」を開発をおすすめ致します。
最後に、1、2で成果を出した店舖は「物販・オンラインショップ」に取り組むことをおすすめ致します。近年、内食、中食、外食市場の境界がなくなりつつあります。さらに今後デジタルトランスフォーメーションが定着していくことにより、その状況が加速すると考えられます。外食の強みを活かし、中食へ参入することで新たなビジネスチャンスを見つけられれば、アフターコロナでのビジネスの飛躍が見えて来ると考えられます。
決して簡単な道のりではありませんが、ぜひ今後の飲食店経営のヒントにして頂ければと思います。
まとめ
2021年の飲食業界トレンドについては、2020年からの継続で『脱・過去の飲食店ビジネスモデル』になるかと思います。売上重視と利益重視、新規客と既存客、デジタルとアナログ、外食と中食などこれまで飲食ビジネスの中でもある程度の境界線はありました。しかし、新型コロナによって社会、市場、人々のライフスタイルが大きく変化しました。それに対応するためには、これまでの基本的な飲食店ビジネスモデルでは成り立たないことが明確になりました。結果、店舖として存在しつつも、柔軟なビジネス転換が求められるようになりました。
2021年はその変化によりスピード感を持って対応できるように、デジタルとアナログを柔軟に越境できる店舖モデルを作る必要があるのではないかと思います。昨年特に注目された『DX(デジタルトランスフォーメーション)』が大手飲食企業のみならず、中小企業から個人店まで浸透することで、コロナ禍においても生き残る店舖として変化し、アフターコロナにおいての新しい日本食文化につながるのではないかと考えております。
「hibana」としても、今後の重要なテーマとなる『飲食店DX(デジタルトランスフォーメーション)』について積極的に取り上げていきたいと考えております。ぜひ今後の飲食店経営のヒントにして頂ければ幸いです。
今後も「hibana」を宜しくお願い致します。