現在、日本の飲食店舗数はおよそ60万店舗弱といわれています。その中で、3年間で約20%の飲食店が閉店するといわれています。メディアでは、日々新しい飲食店が取り上げられている一方で、3~5年の間にほとんどのお店が閉店している状況です。
現在の日本では、明らかに需要過多になっており、飲食店は年々、厳しい経営環境下におかれています。しかし、飲食店経営は独立や新規参入もしやすい事業でもありますので、今後も多くの店舗がオープンされることでしょう。
今回は飲食店経営をされたばかりの方や、これから飲食店経営を考えているという方に向けて、成功するきっかけになるような店舗経営ノウハウをご紹介していきたいと思います。私自身も店舗経営や飲食店経営のサポートをしてきた経験がありますので、そこから得た経営ノウハウを少しでも役立て頂ければと思います。
必ず押さえるべきメニュー戦略【目次】
- 店舗コンセプトの選定(専門店化すべきか?すべきでないか?)
- キラーメニューの作成
- 戦略的なメニューブックの作成
1.店舗コンセプトの選定(専門店化すべきか?すべきでないか?)
最近では、飲食店の中でも、特定の食材やジャンルに特化した飲食店が多くオープンしているかと思います。
例えば、「牡蠣専門店」「鯖専門店」など、使用している食材を全面に打ち出し、エッジのある飲食店が注目をあびているかと思います。これまでは、チェーン店をはじめとした総合居酒屋が主流となっていた時代から、現在は「イタリアンが食べたいから●●に行こう」「魚介を食べるなら●●だよね」などの会話が聞かれるかと思います。現在のトレンドでもありますし、ある分野で一番のお店にならないと集客できない時代でもあるといえます。
では、本題の「専門店化すべきか?すべきでないか?」についてですが、
これは、商圏しだいということになります。
つまり、人口の多い「都市部」での出店なのか、「地域密着型または郊外」の出店なのかによって、コンセプトを設定する必要があります。もう少し、詳しく状況を見たいと思います。
都市部での出店の場合
都市部での出店の場合はいわゆる「エッジ」のあるお店は有効です。その理由は大きく2点あります。
①見込み客が多い
②競合店が多い
①については、人口が多いため、自店のターゲット層や、興味を持ってもらえる見込み客が多いからです。例えばわかりやすく「焼肉店」を例にしてみると、焼肉を食べに行く頻度は一人あたりどのくらいでしょうか?これは人にもよりますが、一般的に3か月に一回としてみましょう。この場合、商圏に1万人いる場合と10万人いる場合を比較すると来店頻度が一定とすると人口が多いエリアで出店しないと集客に限界が出てきます。
②については、都市部の場合、メディアを通して多くのお客様にアピールすることができます。その場合、「エッジ」のある専門店の方が注目されます。つまり相性が良いです。常に、情報が行き来していますので、一度注目されれば、郊外や地方からも集客することが可能です。また、競合が多い場合、圧倒的な差別化をする必要があります。「焼肉」というジャンルで、カルビの大きさが「日本一」なのか、「A5ランクのブランド牛が一人前500円で食べられる」など、注目されるようなコンセプトが重要となります。
地域密着型または郊外の場合
こちらのようなエリアでは「エッジ」(専門店)よりも重要なことがあります。それは、利用頻度を高めるためのメニュー戦略です。
①利用シーンの幅を広げる
②来店頻度を増やす季節メニューをつくる
①については地域密着型の場合は絞った商圏内の住民に頻繁に着て頂く必要があるので、カスタマの利用シーンに合わせて注文できるようなメニューの品添えを意識する必要が出てきます。つまり、ご飯メインのシーンと飲みがメインのシーンにも対応できるお店である必要があります。ランチ、ディナー、飲み会、食事会など「料理」よりも「食事する空間」を作り出すことが重要になります。
②については、①と少し似ていますが、限られたカスタマに対して、来店動機を作り出す必要があります。そのため、①のような一日のライフスタイルにおける利用シーンを作り出すことに合わせて、年間を通して、利用していただけるような「飽きの来ない工夫」が必要となります。やはり食といえば、旬の味覚ですので、常連のお客様におすすめして、次回の来店の為の告知をすることが重要となります。
以上のように、商圏によって適切な店舗コンセプトがありますので、商圏の情報をしっかりと分析したうえで、専門店化すべきかどうかは検討されるとよいかと思います。
2.キラーメニューの作成
「お店のおすすめは何ですか?」とお店の運営に関わる方は聞かれたことはありませんか?また、飲食店に行ったことがある方は聞いたことはありませんか?
おすすめの料理はお店の「ウリ」に等しいです。ビジネスでは当たり前のことですが、人においても初めての人とは自己紹介をしますから、自分の特徴を短時間で伝えるためには、わかりやすく形にすることが必要です。飲食店では「当店自慢の料理」があるかないかがとても重要となります。ここでは当店自慢の料理、NO1メニューを「キラーメニュー」と呼んで行きたいと思います。
キラーメニューをつくる4つのメリット
1.お店のブランドが作りやすい
ウリとなるメニューがあるということはカスタマに覚えてもらいやすくなります。例えば鮮魚に自信があるお店ならば、日替わりのお刺身盛り合わせをリーズナブルに提供することによって、「●●のお刺身ってコスパいいよね。また食べに行きたいね」という会話が生まれる可能性があります。また、この際が繰り返し生まれることによって、「口コミ」となります。現在ではネットを介した口コミが主流になっていますので、短期間で多くの人に拡散することが可能です。つまり、圧倒的に強い「キラーメニュー」があるかないかで、お店の認知度や集客が変化してきます。
2、食材に関する負が軽減できる
食材に関して、ネックとなることは主に3つあると思います。「仕入れ・仕込み」「廃棄ロス」「原価率の調整」です。
「キラーメニュー」を作成し、注文率を上げることで、カスタマの注文が「キラーメニュー」に集中してきます。それにより、注文されるメニューの予測がしやすくなります。予測によって、仕入れや仕込みの量の調整、料理を作る効率も良くなります。そして、廃棄が減り、原価率の上昇を抑えることも可能になります。
3、提供スピードの向上
料理の提供スピードはお客様の不満になりやすい重要な部分となります。いくら満席で賑わっていようが、提供スピードが遅いという印象を持たれてしまった場合、2度目の来店は見込めなくなります。「キラーメニュー」の注文率が上昇し、調理の習熟度が向上することで、その不満を生みづらくなります。
4、お店の自信となる
自慢の「キラーメニュー」があることで、ブランディングしやすくなり、集客が増え、コストも削減できます。さらに重要な部分になりますが、スタッフの育成にも関連してきます。最近では飲食業界の人材不足が問題視されていますが、それは給与面だけだけでなく、モチベーションも関連しています。お店の自慢できる部分が増え、人気店になっていくことで、この店で働く楽しさや、動機にもつながります。
以上のことから、お店自慢の料理「キラーメニュー」を作らない理由はないかと思います。
飲食店に限らず、業績なコンビニチェーンでも「おにぎり」や「おでん」といった人気商品も毎年改良を加えています。そのような地道な取り組みがお客様にファンになってもらう重要な要素となります。
すでに、看板メニューがあるお店であっても、定期的に見直しをすること、新たな「キラーメニュー」の作成に取り組んでい頂きたいと思います。
2.戦略的なメニューブックの作成
ここではメニューブックにこだわることの意味と、作成のポイントをお話ししたいと思います。
メニューブックにこだわることの意味
まず、お店に関係されている方に質問です。あなたのお店ではメニューブックにこだわっていますか?
手作りのメニューブックで特にこだわっていないというお店の方は正直もったいないと思います。
メニューブックはお店に来店されたお客様と最も距離が近く、最も気軽にコミュニケーションが取れるお店の営業担当です。
もちろん、メニューブックを見ないでご注文される方もいるかとは思いますが、ほぼメニューを見ない方はいません。つまり、メニューブックのクオリティによってもお店の良し悪しを判断されるということです。
そんなお客様を最も近くで接客をするメニューブックにこだわらない意味があるでしょうか?
私はないと思います。
ちなみに、ヨレヨレで、汚れもついた紙のメニューブックを使うのよくないです。これは誰から見ても明らかですが、清潔感が重要な飲食店ではあってはいけません。是非、加工したり、メニューブックとしてしっかりと設置することを意識していただきたいです。紙メニューの場合はお客様ごとに新しいものを使用するのがオススメです。
メニューブック作成のポイント
写真のクオリティ
私は以前、飲食店向けの広告の仕事をしていましたので、はっきりと断言できます。客観的に見て「美味しそう」「食べてみたい」と思えない写真はNGです。実際に広告を通して見てみると、一般的に良い写真を使用しているお店の予約状況は競合店と比較しても多い状況でした。また、スマホでお店の人が撮った写真を使用しているお店をプロのカメラマンが撮った写真に変更するだけで、明らかに問い合わせが増えた事例も多くあります。それぐらい写真はお店を魅力的にアピールするための手段となります。メニューブックを始め、販促物にはこだわった「奇跡の一枚」を使用することを強くお勧めします。
ちなみに、「よい写真」とはどのようなものを言うのか例をご紹介しておきます。
【アラカルト】
【コース】
【シズル感・・・美味しそうと思わせる、または食欲をそそる印象のもの】
メニューレイアウト(構成)
レイアウトで注意して頂きたい事は2点です。
・アピールしたい料理の強弱
・料理写真の使用
まず「アピールしたい料理の強弱」に関しては、お勧めしたいものはしっかりと目立たせること、そして、アピールしたい内容は左上から「Z」を描くことを意識することが重要です。人ははじめ「視覚」で物事を判断しますので、注文してもらいたい料理は写真付きでしっかりとアピールすることが大切です。また、目で見る場合は心理的に左上から見ることが多いので、その動線を意識しながら、インパクトのある情報を配置していくと良いです。
次に「料理写真の使用」ですが、これはお客様にインパクトとわかりやすく情報を伝えるためです。また、事前に伝えることで、注文時の料理のイメージと実際の料理の印象のギャップを埋めることができます。もっとも避けたいことはお客様の期待とかけ離れた料理を提供することです。それを防ぐためにも、しっかりと写真を活用することは重要となります。ちなみに、使いすぎは逆にメニューブックの強弱がなくなってしまいますので注意が必要です。
自店の強み・競合情報・客層(ニーズ)分析の重要性
ここまで、「メニュー戦略」についてお話ししてきましたが、戦略を考えるための土台として「自店の強み」・「競合情報」・「客層(ニーズ)分析」が必要となります。
これは経営の「3C」の知識で、経営判断する際に使える考え方になります。
・自店の強み→カスタマから見て魅力的な強み(料理の質、おしゃれな内装・個室完備)を持っているか
・競合分析→商圏内で競合となるお店はどんなお店か?人気の理由は?自店と比較して差別化はできるのか?など
・客層(ニーズ)分析→商圏で動いている客層はどんな人たちか?どんなニーズがあるのか?など
ここでは簡単なご説明となりますが、以上な考え方を持ちながら飲食店経営をされると良いかと思います。
しかし、現場で働かれている方は忙しく、なかなか外部情報を入手し分析するのは難しいかと思います。そんな時には、飲食店に関連する業者を利用するのも効率的かと思います。
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