コロナ禍の飲食業界において大手企業をはじめとした店舗やブランドの業態転換、変更がしばしニュースで取り上げられる様になってきました。果たして各社の経営はうまくいっているのでしょうか。
この記事では「コロナ禍において業態転換した飲食企業・店舗」をまとめます。時代の流れに沿ってお一人さま用ニーズを取り入れたり、この機会に客層を一新したりと各社工夫を凝らしています。それらのヒントを得ながら、自店にもできる取り組みを実践していきたいですね。
コロナ禍で業態転換した企業まとめ
塚田農場
塚田農場は(株)APカンパニーが運営する鶏居酒屋専門店です。主に地鶏を使った料理を提供しており、現在では全国に100店舗以上を展開する人気居酒屋チェーンです。コロナ禍において業態転換し、ニュースに取り上げられました。
新ブランドの「つかだ」 設立へ
コロナ禍の現在は「脱居酒屋」を目指し、渋谷をモデルエリアとして「塚田」から「つかだ」へのリブランディングを進めている最中。
またコロナ禍で「居酒屋のような大人数でわいわいがやがやして飲むという文化が極端に減ってしまった。」という声もあり、また塚田農場が本来取りたい客層と少しずつかけ離れたいったための対応策とも言えます。
これまで居酒屋運営で培ってきたノウハウや、生産地から直接仕入れた食材を提供し、「居酒屋」としての料理・場所の提供ではなく、より「食事」ができる場所の提供を行っていく方針です。
参考:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/forcast/00004/00149/
参考:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2006/05/news073.html
ワタミ
居酒屋チェーン大手のワタミホールディングスは、「和民」全店など居酒屋120店舗を「焼肉の和民」に転換する。今後の主幹事業を焼肉に変更する方針。
居酒屋チェーン大手のワタミは2020年10月5日、既存の居酒屋業態120店舗を焼肉の新業態「焼肉の和民」に転換すると発表しています。昨今の「居酒屋離れ」の加速化や新型コロナウィルス感染拡大による売り上げの大幅減少などを受けてのこと。他方で焼肉業態の需要は今後も伸びるであろうとの試算から。
現在ワタミの居酒屋業態は、「ミライザカ」163店舗、「鳥メロ」131店舗、「和民」と「坐・和民」はそれぞれ2021店舗出店しています。
業態転換は、「居酒屋 和民」「坐・和民」全店と、「ミライザカ」「鳥メロ」の一部店舗で実施。以降はフランチャイズにより5年で400店舗の出店を目指し、居酒屋「和民」業態は、2021年3月末までにすべて切り替えるとのこと。
参考:https://www.ssnp.co.jp/news/foodservice/2020/10/2020-1006-1433-14.html
サイゼリヤ 小型店化
イタリア料理をリーズナブルに提供するサイゼリヤは2021年4月までに東京都内に従来の6割程度の広さの小型店を出店するとのこと。新型コロナウイルスの流行により大幅に客足や売り上げが落ちてしまっている飲食業界ですが、今後はコンビニエンスストアほどの大きさに絞り、経営の効率化や出店時の費用を軽減する狙いです。また小型店では席の隣同士を板で仕切る等の完全症対策を行い、一人客の専用席を多く設ける。
メニュー数や価格は同じで、持ち帰りや宅配にも対応するとのこと。
また新業態店「ミラノ風ドリア」を中心に約20種類を扱う「ミラノ食堂」を開業。オフィス街にあり、周辺の会社員などの需要を見込む。これまでの様な店内飲食にほぼ100%比重をおく考えを改め、宅配やテイクアウトで売り上げ全体の4割は稼ぎたいとの考え。
今後同社は、 新型コロナウイルスの影響が長期化するとみており、賃料などが安くすむ小型店を事業の柱に育てていく方針です。
ロイヤルホールディングス
ロイヤルホールディングス(株)は、主要店舗であるロイヤルホストや天丼てんや、専門店など、グループの様々なブランドの人気メニューがテイクアウト、デリバリーで利用できる専門店を展開すると発表しています。
今後は、既存店舗においてもテイクアウト商品を増やし、デリバリーを導入するとともに、昨年12月から本格展開している家庭用フローズンミール「ロイヤルデリ」の販売を強化する方針。
またグループ会社内で運営する「文京グリーンコート」内の職域食堂を一部改装し、「ROYAL Mirai Dining」として実装するとのこと。
〈店舗概要〉
正式名称 | ROYAL Mirai Dining(ロイヤルミライダイニング) |
所 在 地 | 東京都文京区本駒込 2-28-8 |
営業時間 | 注文受付 11:00~19:00/受け渡し 11:30~20:00 |
メニュー | テイクアウト/デリバリー28 品、 家庭用フローズンミール「ロイヤルデリ」19 品(予定) |
吉野家の宅配専門店
宅配専門店の「吉野家」を展開。
※画像はイメージ
公式にはあまり公表されていないが、大手牛丼チェーンの「吉野家」はデリバリー専門店を展開している。コロナ禍においてニーズの高まった、デリバリーニーズに応えられるようデリバリー代行業者のUberEatsや出前館の利用者向けに該当施設を開設した。同施設内ではお店で出す「吉野家の牛丼」と同じ料理を作っているとのこと。
三光マーケティングフーズ
株式会社三光マーケティングフーズは株式会社Globridgeが運営する、ウーバーイーツ限定ゴーストレストラン「東京からあげ専門店 あげたて」のフランチャイジーとなり、7月1日にオープンさせた。ビル内にある「金の蔵」の店舗の厨房を活用する予定です。
「あげたて」は2019年12月にサービスが開始され、既存の厨房で売上が上乗せできるFCパッケージ。コロナ禍で売上が減少する飲食店から注目され、約半年で50店舗を超えるFCチェーンに育ちました。
空中階の居酒屋店舗を持つ外食企業の売上確保のための一手段として、同社が採用しています。
イトーヨーカドー × とくし丸
最後に紹介するのは飲食店ではありませんが、地域のニーズに合わせて業態転換した企業です。
スーパーを展開するイトーヨーカ堂と寿司チェーン「とくし丸」が共同で展開する移動型スーパー。昨今の商店数が減少し、近隣にスーパーなどの店舗がない買い物に不便をしている「買い物難民」に対し同サービスを提供しています。冷蔵機能を備えた軽車両に加工食品や生鮮品、日用品など、約400品目1200点を積載し平日週4日の10時〜17時までの予定で、八王子市を中心としたエリアを移動スーパーとして巡回。移動販売車両は「販売パートナー」と呼ばれる個人事業主が所有し、提携先スーパーの商品を販売代行します。
まとめ
コロナ禍で大きな逆風が吹いてしまった飲食業界。売上や客数が大きく落ち込んでいく中、各社は売上回復、時代のニーズに合わせて素早く舵を切って動いています。
そしてこうした中で求められるのは、時代を読み解く力とそれに対応する柔軟な姿勢を崩さないことです。読者である飲食店経営者の皆様にはこうした他社事例を参考に、「逆境でも勝つ経営・生き残る経営」を続けていってもらいたいと願います。