飲食店で独立をお考えの方は多くいらっしゃると思います。特別な資格も特に必要なく、自分の好きな場所で好きな料理を自由に提供することができるからです。誰でもやる気次第で事業を行えるということは、それだけ競合も多い分野であることを認識しておく必要があります。特に飲食店経営者の場合、料理人やサービスをメインでキャリアを積んできた方が多く、経営や財務会計の知識をあまり持たれていないということが多いと思います。この経営や会計の知識をつけ、安定した経営をすることが競合にも負けずに長く存続できる一つのポイントでもありますので、今回基本的な会計の仕組みをご紹介していきたいと思います。
[目次] 資金繰りを安定させる財務戦略
- 個人事業の陥りやすいお金の流れ
- 基本となるお金の流れ
- お金の流れを可視化する
- 飲食店における重要経費【FLコスト】
- +α【儲かりやすい飲食業態は?】
- 最後に
個人事業の陥りやすいお金の流れ
儲かっていてもつぶれるリスクあり(黒字廃業の落とし穴)
ニュースなどでもお聞きすることがあると思いますが、企業では黒字廃業(黒字倒産)というリスクがあります。これは、会計上の営業利益は黒字でも、あくまでも売掛金を入れた数字であって、キャッシュ(現金)が手元にあるわけではないということです。それによって、本来支払うべき費用を支払うことができずに、事業継続が難しくなり倒産してしまうということです。
飲食店経営者においては、個人事業主も多いと思います。その場合、注意が必要なことは、手元に残る現金がいくらになるのかということです。個人事業主の場合は、自分の生活費の管理はもちろんですが、借入金の返済や税金、保険の支払いもあることを認識しておく必要があります。
基本となるお金の流れ
上記のキャッシュフローで考えると、生活費までは確保することができますが、税金関連や今後の事業投資の資金などまで確保することができません。飲食店を継続的に経営する、または、事業拡大を視野に入れているのであれば、その実現に向けたキャッシュフローの管理が必要になります。
上記に関しては、店舗売上をプラス30万円確保できた場合のシュミレーションになります。最終的に手元に残る現金を23万円確保することができました。これにより、税金の支払い、また、資金の積み立ても可能となります。
店舗経営において抑えるべき財務のポイント
飲食店や店舗経営において利益を出すべきポイントはほぼ決まっています。ここでは、そのポイントに触れておきたいと思います。
売上向上
ビジネスにかかわる方であればだれでもお分かりの通り、「売上」は最も重要です。売上を増やし、その他の経費や支出を上回ることができれば利益は出ます。そのため、手元の現金を増やすためには売上向上は前提条件となります。しかし、売上を増やし続けることは容易なことではありません。そのため、経営とは売上増加の戦略も考えつつも、売上が確保できない状況に陥った場合でも利益を安定的に確保できるように財務戦略を同時に考えていく必要があります。
経費の最適化
店舗経営において抑えなければいけない経緯は「家賃」と「人件費」となります。飲食店の場合は「材料費」も含まれます。もちろん、その他にも水道光熱費や販促費もあります。しかし、大きなウェイトを締めるこの2つに関しては、利益を左右する経費なので、注意が必要です。これらの経費を店舗の売上状況に合わせてマネジメントする必要があります。
例えば、家賃については出店時の交渉など契約時にしっかりとした確認が必要です。また、人件費に関しては、社員、アルバイト採用、また継続的な人材育成も重要になります。
粗利の改善
飲食店について話すと「材料費」になります。仕入れ値の交渉や管理、また効率的な使い方をすることが重要となります。例えば、食材は廃棄を出さないように、食材の余った部分をうまく活用した料理を開発することや、食材原価をかけた看板メニューと原価を抑えたサイドメニューのバランスを考える必要があります。
お金の流れを可視化する
お金の流れを意識してみるためには、収入支出を日々管理していくことが重要です。
多くのお店の方が管理させているとは思うものの、日々どのくらいの売上があり、支出しているのかを詳細に把握している人は意外に少ない印象です。この管理を行うことで、経営に関する見方が変わることは確かです。
紙ベースやエクセル管理するのでも良いと思いますが、現在ではクラウド会計システムが普及しているので、少ない手間で管理することができます。
私自身も使用して、日々の経費精算やキャッシュの管理をしています。
おすすめのアプリとしては、主に3つです。
・マネーフォワード
・freee
・弥生会計オンライン
無料〜有料プランまであるので、お試しから少し活用してみると良いかと思います。
飲食店における重要経費【FLコスト】
FLコスト
材料費と人件費を合わせた経費の事を指します。
一般的に、売上高を100%と仮定した場合に、材料費と人件費を合わせて60%前後に収めることが重要だと言われています。もちろん、各30%にする必要はありません。飲食業界でも業態によって、目安は異なります。
例えば、
回転ずし・・・材料費(40%)人件費(20%)
クラブやバー・・・材料費(5%)人件費(55%)
いずれにしてもFLコストの60%は基準となります。そのため、各業態やお店コンセプトに合わせて、材料費、人件費をコントロールすることが重要となります。
+α【儲かりやすい飲食業態は?】
儲かりやすい飲食業態としては「粗利が大きい業態」です。
・居酒屋
・焼き鳥
・焼肉
・お好み焼き、もんじゃ焼き(粉物)
・ラーメン、うどん、そば
居酒屋・焼き鳥
→料理の内容によって減価率を調整しやすい。また、アルコール比率も高いため、粗利率が上がりやすい。
焼肉
→肉の仕入れ原価は高いが、お肉を焼く行為をお客様に任せることで、人件費を抑えることができる。
お好み焼き・もんじゃ焼き
→食材原価も安く、調理の手間を省き人件費を抑えることが可能なため。
ラーメン・うどん・そば
→原価、人件費を抑えることが可能。かつ、サイドメニューやトッピングを活用することで客単価の向上も可能。
以上のことからもわかるように、上記でもお話しした『材料費』と『人件費』のFLコストの管理が重要となります。
最後に
これまで飲食店経営における財務戦略のポイントを述べてきましたが、重要なポイントをまとめると2つおさえてほしいと思います。
①当事者意識を持ち、キャッシュの流れを管理する
②長期的な視点で財務戦略を考える
①については、キャッシュフローを日々意識するために、可視化する仕組みを作ることをおすすめします。売上の数字だけでなく、月単位でもいいので経費をしっかり自分の目で管理することを意識しましょう。それにより、経営数値全体を意識するようになり、より質の高い経営戦略を立てられるようになるでしょう。
②については、手元に残った現金を将来的にどのように運用していくのかを考える必要があります。出店計画、新規事業など、ビジネスで成功するためには、変化に対応しながら、前に進む必要があります。短期的な儲けも大切ですが、将来的な成長を考えることで、また新たな考え方、成長のきっかけを作れる可能性があるかと思います。
まだまだ、財務戦略に関して抑えるべきポイントはあるかと思いますが、まずはこちらの基本的な内容を参考にして頂ければと思います。