商品・料理名はブランディングにも密接に関係しており、ユーザーの興味・関心を左右する重要な要素です。かつて流行した料理の中には、味や見た目だけでなく名前も印象的なものが多いです。流行したものやこれから流行しそうなものなどトレンドもご紹介しながら、ネーミングのアイデアを見ていきましょう。
音の持つイメージ
まずはじめに、こちらの図をご覧ください。
トゲトゲした図形と丸みのある図形。このふたつにそれぞれ「ブーバ」「キキ」という名前をつけるとしたらどちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」だと思いますか?
Wikipediaより引用
右を「ブーバ」、左を「キキ」と名付けた人が多いのではないでしょうか。
これは「ブーバ/キキ効果」と呼ばれる有名な実験で、95%以上の人が丸みのある図形を「ブーバ」、トゲトゲ図形を「キキ」と名付けたそうです。
我々は言葉や単語だけでなく、音そのものに意味を感じることを証明した実験で、これを「音象徴」と呼びます。この音象徴を意識して、誰もが耳にしたことのある定番商品に当てはめて考えてみましょう。
ジャンル別・定番商品から見るネーミング
飲食に限らず、誰もが聞いたことのある定番商品にはしっかりとしたターゲット設定があり、それに合ったネーミングがあります。先ほどの音象徴の考えから、それぞれ男性、女性、子供向けの商品名を見ていきましょう。
男性商品は「b 、d、g」などの有声破裂音
おもにb、d、gなどの音は男性・男の子向けの商品名に多く見られます。代表的な例として「ガンダム」「ゴジラ」「ドラゴンボール」などがあります。どれも力強さやカッコよさの伝わるネーミングですね。ガッツリ系のスタミナ料理やラーメンなど、男らしさをアピールしたい場合に向いています。
女性商品は「l、m、n、r、z」など破裂音でない有声音
女性向けの商品ではl、m、n、r、zなどの音が多いです。「メルカリ」「マリメッコ」「セーラームーン」など、男性向けの商品よりも柔らかいイメージがありますね。スイーツやヘルシーな料理との相性が良いです。
子供向け商品は「p、m」などの唇音と半濁音
子供向け商品はp、mなどの唇音・半濁音と呼ばれる音が多い傾向にあります。とくに赤ちゃん向け商品には「パンパース」「ムーニーマン」「マミーポコ」などp、mがとても多いです。赤ちゃんは「かきくけこ」などの音の発音や聞き取りが苦手で「まみむめも」「パピプペポ」などの音が発音しやすいという理由もあるようです。
インパクト大!流行から考えるネーミング
定番商品のネーミングはターゲットによって音の与える印象を意識して付けられていることが分かりました。次は近年流行したスイーツ・料理名の由来や特徴を見ていきましょう。
タピオカ(タピオカミルクティー)
とても明るくポップなイメージの名前で、甘いミルクティーともちもちの食感にマッチしています。原料となるキャッサバの産地での呼び名が由来でマーケティングのために付けられたわけではないですが、つい口に出したくなる名前ですね。唇音の「ピ(p)」がかわいらしいイメージを与えてくれます。これが「タビオカ」や「タヒオカ」だとかなり違ったイメージになりそうですね。
マリトッツォ
イタリア語で夫を意味する「マリート(Marito)」という言葉が由来とされています。mやrなどの有声音が入っており、こちらもタピオカ同様かわいらしいイメージ。美食の国というイメージの強いイタリア発祥であるということも流行の一助となっています。
チーズタッカルビ
「タッカルビ」は肉や玉ねぎ、にんじんなどをコチュジャンと炒め合わせた朝鮮半島の料理で、そこにチーズを加えてアレンジを加えたのがチーズタッカルビ。「チーズ」「カルビ」は馴染み深い言葉ですが「タッカルビ」はどんなものだろうと興味をそそられます(「タッ」は韓国語で鶏肉という意味)。日本では新大久保のお店から人気に火がつき、様々なメディアでも取り上げられて大流行しました。
トゥンカロン
フランス生まれのマカロンをアレンジしたボリュームタップリの韓国発スイーツ。韓国語の「太った、ぽっちゃり」を意味する「トゥントゥン」「トゥントゥンハン」とマカロンを合わせた造語です。韓国スイーツはクロワッサンとワッフルを組み合わせた「クロッフル」や紙カップに入った「カップティラミス」など、既存のものを組み合わせて新たな名前で打ち出しているものが多く、とても参考になりそうです。
台湾カステラ
ふっくらしていて、持つとふわふわ揺れるほど柔らかい台湾風のカステラ。名前はシンプルですが、観光地としても人気がありタピオカミルクティーの発祥である台湾というワードはそれだけで良いイメージを持つ人が多いです。まだ知られていない海外のスイーツをいち早く取り入れれば、流行のキッカケとなるかもしれません。
食べてみたくなる!今後流行りそうなもの
タピオカをはじめとした、名前も見た目もインパクトのある流行の料理を紹介しました。では次に、今後流行るかもしれない、注目のスイーツ・料理を紹介します。
カノムトゥアイ
タイ・アヨタヤ・レストラン 食べログより引用
料理、観光ともに人気のタイ発祥、ココナッツミルクを使った柔らかいプティング状のデザート。韓国の人気グループ・BLACKPINKのメンバーであり、世界でもっとも有名なタイ人とも言われるリサ(Lalisa Manoban)がInstagramのストーリーズに投稿していました。フォロワー数はなんと8000万人越え。以前リサがインタビューで地元ブリラム県のミートボールの話をしたところ、ミートボールが大人気になったそう。SNS発信の流行も今後増えてくるかもしれません。
生ドーナツ
I’m donut ? 食べログより引用
生ドーナツはこれまで何度か流行しましたが、新たな火付け役は人気ベーカリー「アマムダコタン」が手がけるドーナツ専門店「I’m donut?(アイムドーナツ)」。手に持つと崩れそうなほど柔らかく、口に入れるととろけるような柔らかさが特徴です。ドーナツ以外にも「生キャラメル」「生食パン」など「生」が付いた商品は多く、柔らかさや新鮮さなど美味しさに繋がる印象を与える効果があります。
クリームうどん
山下本気うどん 食べログより引用
渋谷にある大人気店「山下本気うどん」の看板メニュー。うどんの上にクリームが乗っているビジュアルはインパクト抜群。見た目に反してサッパリとした味が人気を呼んでいます。うどんとクリームという組み合わせは「どんな味だろう」と気になってしまいますね。意外な組み合わせはインパクトを与えるにはうってつけです。
クニャーネ
たま木亭 食べログより引用
京都発のベーカリー「京都 たま木亭」の人気商品。ロール状になったパイ生地にクリームがたっぷりと詰まっています。名前は特徴の似ているフランス菓子「クーニャマン(クイニーアマン)」が由来。海外の食材や料理名を日本人の耳にも親しみやすいようにアレンジするのもネーミングテクニックのひとつです。
おちょこ丼
TOKYO FISHERMAN’S WHARF UOHIDE 渋谷 食べログより引用
渋谷にある海鮮居酒屋「UOHIDE」の人気ランチメニュー。おちょこのような小さなお椀に盛られた海鮮丼が数種類付いてきます。かわいらしい見た目はもちろん、一度にいろいろな味を食べられるのも魅力のひとつ。今までは海外由来の名前が多かったですが、和のイメージがある居酒屋ならではのネーミングですね。
ユニーク!お店の名前も個性的
これまでは料理や商品名を見ていきましたが、ユニークでセンスの光る店名のお店も近年増えています。次は個性的な店名を見ていきましょう。
小麦の奴隷
小麦の奴隷 公式サイトより引用
店名に「奴隷」という、一見イメージの悪そうな言葉が入る大胆なネーミング。人類の生活に小麦が欠かせないことや「焼きたてのあの香りが忘れられない」「今日食べてもまた明日も食べたいと思える美味しいパンを届けたい」という思いから付けられたそうです。香ばしい小麦の香りと同じく、一度見たら忘れられないインパクトのある名前です。
君のハンバーグを食べたい
君のハンバーグを食べたい 公式Instagramより引用
何かのセリフのような店名。映画化もされた人気小説「君の膵臓を食べたい」を思い浮かべた人も多いのではないでしょうか。オマージュなのか、まったく無関係なのかは分かりませんが、小説や映画など人気の作品名をアレンジするというのも素敵なアイデアです。「キミハン」という公式の略し方もセンスが光ります。
東京おでんラブストーリー
東京おでんラブストーリー 公式Instagramより引用
昭和の名曲のような雰囲気を感じる店名。内装も昭和レトロなテイストで大人は懐かしさを、若者は新鮮さを感じるお店です。「昭和」や「レトロ」など直接ワードを入れずにその時代や雰囲気を彷彿とさせるとても上手なネーミングですね。
うん間違いないっ!
うん間違いないっ! 公式サイトより引用
関東を中心に展開する高級食パン店。”誰もが食べた瞬間つい「うん間違いないっ!」と口に出したくなるような美味しさ”という意味が込められています。お店のテイストや商品の情報ではなく、ユーザーが利用したときの感情を店名にするという画期的なネーミングですね。
なぜ蕎麦にラー油を入れるのか
なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。公式サイトより引用
見る人に疑問を投げかける店名。蕎麦にラー油という意外な組み合わせは思わず「なぜだろう」と興味を引かれます。看板メニューの「肉そば」はピリ辛ラー油の効いたタレと蕎麦、甘い味付けの牛肉が相性抜群。「なぜ蕎麦にラー油を入れるのか」その疑問はお店を出る頃にはスッキリ解けている。そんな体験を届けてくれるお店です。疑問を投げかけるネーミングは斬新で見た人の記憶に残りやすいですね。
まとめ
音の持つイメージを上手く活用したものや意外性で興味を引くものなど、どれも印象的なものばかり。個性的なネーミングは印象に残り、写真を撮ったり誰かにシェアしたくなるものです。今回紹介した音象徴や流行した商品・個性的なお店の事例をぜひ今後のネーミングの参考にしてみてください。
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