SNSも更新している、グルメサイトにも掲載している。それでも「思ったほど集客につながらない」「施策を止めると効果が消える」と感じている飲食店は少なくありません。その背景には、“集客施策”と“広報・PR”を同じものとして捉えてしまっている構造的な課題があります。
広告やキャンペーンは来店を促す手段である一方、広報・PRは店の価値や背景を伝え、選ばれ続ける理由をつくるもの。
本記事では、飲食店における広報・PRの役割を整理し、集客施策との違い、そして今なぜ取り組むべきなのかを、現場視点でひも解いていきます。
「SNSもやっているし、グルメサイトにも載っている。でも…」

「SNSは更新しているのに、新規が思ったほど増えない」
「広告費をかけても、一時的な集客で終わってしまう」
「価格や立地では勝負しづらくなってきた」
こうした悩みを抱える飲食店経営者・広報担当者は、決して少なくありません。集客施策自体は増え、手段も多様化している一方で、「伝えたい価値が、きちんと伝わっていない」という感覚を持つ現場は増えています。
この背景にあるのが、“集客”と“広報・PR”を同じ文脈で捉えてしまっている構造的な課題です。
本記事では、
- なぜ飲食店に広報・PRが必要なのか
- どんな考え方で取り組むべきか
- 規模別に、どう実務へ落とし込めばよいのか
を、業界構造と現場視点の両面から整理していきます。
なぜ「頑張っているのに、伝わらない」のか

集客施策が“消耗戦”になりやすい理由
多くの飲食店が行っている施策は、
- グルメサイト掲載
- SNS投稿
- クーポンやキャンペーン
- 広告配信
といった「刈り取り型」の施策です。
これらは即効性がある反面、やめた瞬間に効果が止まるという特徴があります。競合が増え、情報が飽和する中で、費用対効果は年々悪化しがちです。
消費者行動の変化:「選ばれる理由」が問われる時代
現在の消費者は、
- 店名
- 料理写真
- 価格帯
だけで店を選んでいません。
「どんな人がやっている店なのか」
「なぜこの店をやっているのか」
「どんな考えで料理を作っているのか」
といった背景情報を、無意識のうちに見ています。
ここで重要なのが、「広報・PRは“来店理由を補強する役割”を担うもの」という視点です。
広報・PRの本質|飲食店における広報とは何をすることか

広報=露出ではない
広報という言葉から、
- メディアに載ること
- 話題になること
を想像する方も多いですが、本質はそこではありません。
飲食店における広報・PRの役割は、「この店が、なぜ存在しているのか」を第三者視点で言語化し、信頼を積み重ねることです。
広告と広報の決定的な違いとは何か?

飲食店の集客施策を考える際、「広告」と「広報(PR)」は混同されがちです。しかしこの2つは、目的も、役割も、時間軸もまったく異なるものです。
まず広告とは、お店が伝えたい情報を、自分たちの言葉で、費用をかけて届ける手段です。
「新メニューが出ました」「キャンペーンを実施しています」「今ならお得です」といった情報を、確実に露出できるのが広告の強みです。一方で、その情報はあくまで“お店発信”であるため、見る側は無意識に「宣伝」として受け取ります。広告は即効性がある反面、配信を止めた瞬間に効果も止まりやすく、継続的な費用が前提になります。
対して広報(PR)は、第三者の視点を通じて、お店の価値や背景が伝わる状態をつくることを指します。
メディア掲載、取材記事、口コミ、SNSでの自然な言及などは、すべて広報の領域です。ここで伝わるのは、「何を売っているか」だけではなく、「なぜこの店が存在しているのか」「どんな想いでやっているのか」といった文脈です。広報は即効性こそ高くありませんが、信頼や共感として蓄積され、後から効いてくる施策です。
つまり、広告は「来店を促すためのアクセル」であり、広報は「選ばれ続ける理由をつくるための土台」と言えます。
どちらが正解という話ではありません。短期的な集客には広告が有効な場面もありますし、中長期的にブランドを育てたいのであれば、広報の視点が欠かせません。
重要なのは、広告で何を“刈り取り”、広報で何を“積み上げるのか”を整理したうえで、役割を分けて使うことです。
飲食店経営において、広告と広報を同じ文脈で考えてしまうと、「ずっと費用をかけ続けないと集客できない状態」から抜け出せなくなります。
広報は、その構造自体を変えるための取り組みだと考えると、位置づけが明確になるはずです。
成功している飲食店に共通する広報視点

①「売りたい」より「伝えたい」が先にある
うまく広報を活用している店舗ほど、
- 新メニュー
- フェア
- 出店情報
を発信する際も、必ず背景や文脈をセットで伝えています。
例:なぜこの食材を使ったのか、なぜこの時期にやるのか、。誰のためのメニューなのか
これがあることで、情報は“ニュース”になります。
② 自分たちの「当たり前」を疑っている
現場では当たり前のことが、
- 外から見ると価値になる
- 記事やコンテンツの種になる
ケースは非常に多いです。
仕込みの工夫、仕入れ先との関係性、スタッフ教育、地域との関わり。広報とは、当たり前を編集し直す作業とも言えます。
③ 広報を「現場任せ」にしない
広報がうまくいかない店舗ほど、
- 忙しい時に後回し
- 担当者任せ
- 単発で終わる
傾向があります。
成功している企業は、
- 経営視点でテーマを決め
- 現場から素材を集め
- 発信を仕組み化
しています。
実務への落とし込み|規模別・明日から考えたい広報アクション

個店・小規模店の場合
まず考えるべき問い
- うちの店は「何屋」だと認識されたいか?
- 誰に、どんな価値を提供しているか?
現実的なアクション - 月1本でいいので、背景を語る投稿・記事を作る
- 新メニューや周年を「ニュース化」する
- 外部視点(取材・第三者記事)を一度入れてみる
※無理に全部やらないことが重要です。
複数店舗・中規模企業の場合
考えるべき視点
- 店舗単体ではなく「ブランド」として何を語るか
- 採用・社内広報も含めた設計になっているか
現実的なアクション - 広報テーマを四半期ごとに設定
- 店舗事例を横断的に編集
- メディア向け資料を整備
広報は組織の思想を外に伝える装置になります。
注意点|流行りの手法に振り回されないために
- バズ=成功ではない
- フォロワー数=売上ではない
- メディア露出=万能ではない
重要なのは、自店のフェーズ・目的に合っているかです。
広報は「派手な施策」よりも、一貫性と継続性が成果を生みます。
まとめ|広報は、飲食店経営の“土台”になる

- 広報・PRは集客の代替ではない
- 価値を伝え、選ばれ続けるための土台
- 小さく始めて、積み重ねていくもの
もし今、「今のやり方に限界を感じている」「次の一手を探している」のであれば、
“何を伝える店なのか”を見直すことから始めてみてください。
広報とは、店の未来を言語化する行為です。
その積み重ねが、結果として集客・採用・ブランド力につながっていきます。


