感染拡大から半年が経とうとしています。この期間の中で、世界情勢、日本経済、そして飲食業界も大きな変化をむかえています。
今回この記事ではwithコロナそしてafteコロナに向けての飲食業界の動向をまとめて紹介していきたいと思います。特に、今回は飲食業界の上場企業がどのような戦略を打ち出しているかを中心にご紹介してきたいと思います。今後の飲食業界の動向としてぜひ押さえて頂ければと思います。
飲食業界全体の動向
企業規模問わず、飲食店経営をされている企業や個人オーナーが実施した経営判断をピックアップしました。
1、既存店舗の整理(閉店&新店舗開発)
飲食店のビジネスモデルは実際の店舖に来店され飲食をしてもらう形が基本となります。コロナショックにより人の外出制限されたことで、外食が大きく減少しました。結果、イートインによる営業売上しかない飲食店は売上をつくる手段を失い、閉店に追い込まれました。
店舖ビジネスは営業時間が重要になります。営業しないからと言って、通常発生する人件費などの変動費、家賃などの固定費を削減することが現実的にはできません。そのため、コロナ前から利益がでていない店舖は今後回復する可能性は低いと捉え、優先的に閉店し、今後発生する経費を止める判断にならざる終えません。一方で、経営状況や立地が良い店舖で、将来的に回復が見込める店舖については一時的な休業の上、再開することが多いです。
また、店舖の業態転換も大手企業を中心に実施されています。特に、会社員の飲み会などのリスクもあり、居酒屋業態の敬遠が目立ちました。そのため、アルコール中心の飲食店舖から食事メインの業態転換を行い、少人数利用やファミリー利用をターゲットにした店舖への転換が行われています。
2、販売チャネルの拡充(テイクアウト・デリバリー・EC)
外食頻度が減少した結果、飲食店のイートイン売上は大きく低下しました。一方でファーストフード業態はこれまで行ってきた、テイクアウトやデリバリー需要が上昇し、イートイン売上をカバー、それ以上の売上をつくることに成功している企業もあります。
これまで、イートイン営業しか実施していなかった店舖のほとんどがテイクアウト・デリバリーを開始しました。また、合わせて、オンライン化の流れも加速し、オンラインショプ開設によるEC事業にも取り組む企業や個人店舗が増加しました。
テイクアウト・デリバリー・ECについてはIT企業が提供するプラットフォームが浸透し、誰でも簡単に利用できることが大きいかと思います。
3、感染症対策の強化
緊急事態宣言が発令された4、5月と比較し、日常生活が少しずつもどりつつあります。しかしながら、以前外食業界は厳しい状況です。
ただ、一方でお客様がもどりつつ店舖もあります。その特徴としては、「感染症対策」が挙げられます。
具体的には「換気」「ソーシャルディスタンス」「消毒の徹底」などがあります。お客様のお店選びの傾向としては、外食をする際は、可能な限り「感染リスク」を下げたい心理があります。そのため、身近な人間関係(家族やパートナーなど)だけで外食を行い、なるべく他人との距離をとり、お互いの感染リスクをさげる意識が働いているようです。その顧客心理を徹底的に尊重し、わかりやすく感染症対策の取り組みを伝えている店舖はお客様から選ばれやすい形になっているようです。
4、店舖運営方法の改善
先ほど販売チャネル拡充の内容を取り上げましたが、こちらはイートイン営業に関する改善です。
ディナー営業(主に17時〜)しか行ってこなかった店舖は、ランチ営業、カフェ営業、深夜営業などの営業方法にも取り組んでいます。また、複数店舖を運営している企業については、1店舖の営業時間を伸ばすために、系列店舗を休業し、人員を1店舗に集約する営業も実施しています。
運営会社存続のために、売上向上、経営効率化のために、会社の持つリソースを集約して乗り切ろうとしている店舖も多い状況です。
補足事例
補助金・助成金を活用して現状を耐える
個人店から2店舗ほどの経営をしている事業者は、このような戦略をとる店舖が多く見られます。テイクアウト、デリバリー、ECなど売上がつくれるかもわからない施策に経費を取られるのであれば、無駄な運営を徹底的に排除し、店舖として今できる営業に注力し、少しでも長く延命することを目的としています。
これらの動向から言えることは、コロナ禍の中では「正解」がないということかと思います。店舖立地、業態、規模、人材など様々な要因により店舖の状況は異なります。そのため、成功している店舖を参考にすることも重要ですが、「自店」の置かれた状況を客観的に把握し、今できる最適解を自ら見つける努力が必要になります。ここでは、多くの店舖がとる選択肢をピックアップしましたので、あくまで参考にしつつ、自店の今後の戦略設計のヒントにして頂ければと思います。
大手企業の動向まとめ
●ワタミ(新業態展開)
和牛の焼肉食べ放題店舖出店でファミリー層の獲得
引用元:https://www.ryutsuu.biz/report/m061116.html
memo
- ファミリー層獲得
- 日本最大級の和牛生産者の鹿児島「カミチクグループ」とコラボ
- 和牛食べ放題3,980円(税別)~
- 生産者とのコラボによりコスパ良く、お手頃価格で提供
- 特急レーン導入により、省人化と感染症対策を両立
- 目標5年で国内200店舖、海外100店舖
●ロイヤルホスト・すかいらーく(新店舗開発)
1つのキッチンで複数業態のメニュー提供
引用元:https://www.fnn.jp/articles/-/79868
memo
- 1つの店舖に5つのブランドが集まる
- メニュー数は幅広く天丼・ハンバーグ・カレーなど5部ランド28種類のメニュー
- テイクアウト、デリバリー対応キッチンあり
- 顧客ニーズの変化の1つ。同時にビジネスチャンスと捉え新たなモデルにチャレンジする
●吉野家(コスト見直し)
利益重視。徹底的なコスト見直し
引用元:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200728/k10012537061000.html
memo
- 国内外で最大150店舖閉店
→吉野家国内40店舖+海外50店舖
→はなまる国内外30店舖
→京樽国内30店舖
※吉野家以外のグループ企業の店舖を特に精査 - 徹底的なコスト見直し
→売上減少の中でも利益確保可能な経営体制をとる
●エーピーカンパニー(業態変更)
脱居酒屋。塚田農場から専門店『つかだ』へ
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/e0c451c44d9ec136a789169051799e39c026f613
memo
- 居酒屋業態「塚田農場」→地鶏専門店「つかだ」へ業態転換
- 焼鳥つかだ、しゃぶしゃぶつかだ、つかだ食堂、弁当惣菜専門店つかだなど新業態が続々オープン
- 店舖の希少性担保のため、今後は1業態20~30店舖の出店を想定している
●ゴールデンマジック(DDホールディングス子会社)(ハットトリック業態)
複数ブランドを1店舖で実現。時間帯毎の集客を可能にする
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001080.000007303.html
memo
- 勢いのあるブランドを1つのお店に集約
- 幅広い客層と飲食シーンに対応できるようなブランドづくり
①物販(青果店)
②非アルコール業態(喫茶・洋食)
③アルコール業態(酒場) - キラーコンテンツを明確に打ち出す
→博多かわ串・高知餃子・肉刺しなど
●WDIグループの『WE COOK』(ゴーストレストラン )
店舖をもたないゴーストレストラン で世界の料理を提供
引用元:https://www.wdi.co.jp/news/17100
memo
- 店舖を持たないゴーストレストラン
- フードデリバリーに特化
- 「食で世界を旅する感覚を」がコンセプト
- ゴーストレストラン ブランド例
ガーリックシュリンプ専門店
台湾火鍋
ナポリピッツァ
サラダ専門店・・・など
●モスバーガー(非接触型オペレーション)
クレジットカードのタッチ決済に対応
memo
- クレジットカードなどの非接触決済の対応をスタート
非接触IC決済サービス「Visaのタッチ決済」「Mastercardコンタクトレス」「JCBコンタクトレス」「American Expressコンタクトレス」など - 顧客の利便性向上へ
中小個人店舖の動向まとめ
●テイクアウト・デリバリー戦略
実店舖の料理とは全く異なるジャンルでテイクアウト・デリバリーを開始する!
参考記事:https://www.inshokuten.com/foodist/article/5856/
<ポイント>
新ブランド(新メニュー)を開発し、店舖の新しい武器にする
●SNS+EC活用
食のプラットフォームへ(イートイン・テイクアウト・物販にも対応)
参考記事:https://www.inshokuten.com/foodist/article/5851/
<ポイント>
食のプラットフォーム。ものを売るのではなく価値(世界観)を届ける
●喫煙目的店
4月から原則禁煙を逆に活用し、喫煙可能店舖として集客
参考記事:https://www.inshokuten.com/foodist/article/5854/
<ポイント>
需要と供給のバランスを見極める
●経営効率化
店舖の空き時間・空きスペースを活用して経営効率化
参考記事:https://food-stadium.com/headline/28861/
<ポイント>
企業の資産を有効活用し、経営効率を最大化する方法を考える
●業務提携・M&A
店舖存続を第一優先に
参考記事:https://newswitch.jp/p/23449
<ポイント>
店舖存続のための最善策を考える。
同業界、別業界問わず協業を模索することは必須。
<補足>中小企業の戦略例
自店の経営方針を明確にし、変化に対応する
引用元:https://www.inshokuten.com/foodist/article/5848/
<ポイント>
ピンチはチャンス。
時代変化の波に乗ることで見えてくる景色があるととらえる
まとめ(今後の飲食店経営について)
今回、コロナ禍における大手企業から中小個人店舗まで様々な戦略をご紹介しました。それぞれ、売上・利益確保をするために、これまでにないスピード感で新しい事業にチャレンジしていることが感じ取れます。
今後秋冬は例年インフルエンザを中心とした感染症が拡大する時期になります。現段階では、これまでの感染症対策を継続することで、大きな感染症拡大は避けられるのではないかという意見もあります。しかし、避けるためにはやはり、外出自粛、他人との接触制限を意識することになり、外食業界にとってはとても厳しい時期になると考えられます。閉店という最悪なケースに陥らないためにも、今からでも店舖を存続させるための新しい施策を考えるべきかと思います。今回ご紹介した内容はその際のヒントに少しでもなれれば幸いです。
引き続き、飲食店経営に関する新しい情報を発信していきますので、ぜひご覧ください。